あひるの仔に天使の羽根を
「し、須臾!!?」
「お前だって、心の何処かでは判っていたのではないか? それとも人工知能が勝手に、"須臾"の声を真似たのか? お前が"彼女"と新たな子供と棲まうつもりだった…終(つい)の棲家にて、なぜまだ見ぬ子供の部屋を、須臾の部屋と同じにしていた? 意識はともかく、無意識は追っていた。"真実"の娘の姿を」
「……偶然だ!!!」
「偶然ねえ。五皇の言葉とも思えぬなあ? "彼女"の身体を捨てた後も、藤姫は笑っていたぞ? "策に溺れた策士、未だ我が策の中"とな」
白皇が――崩れていく。
「い、偽りを言うな!!!」
「偽り? 何を持って偽りとする?」
緋狭さんが歩み出た。
「真実に擬態していたお前の、偽りとは何だ?」
「私の…私がしてきたことは……」
白皇の表情は、瓦解して…そして。
「あは…あはははは」
ふらふらと立ち上がり、覚束ない歩き方で――
白皇が何処に行くのか。
何をしようとしているのか。
多分、全員が理解している。
その上で。
誰も制止しようとしないのは、彼が多くの人間を狂わして"生"を奪った…その贖いであると考えたのだろう。
白皇は――
塔から飛び降りた。
まるで。
愛した"彼女"の面影と一体化するような、まるで"天使"のように…空を飛んだように見えた。