あひるの仔に天使の羽根を

どすん、という音。



外の歓声が激しく。


"禁断の果実"だとでも思っているのか。


それとも。


死者にはもう…そんな思考力はないのか。



「もっと早く――

こうしてればよかったんだよ。

もっと早く、オレが腹を括っていれば良かったんだ…」



久遠がそう言うと――



「旭は…約束を守れたのでしょうか」



そう…緋狭さんを見上げた。



「ああ…。旭もよく頑張ったな。そして、よく我慢して生きてくれた」



そう、緋狭さんは旭の髪をくしゃりと撫でた。


「緋狭」


呼び捨てにしたのは久遠。



「最後まで、ありがとう」


「それはこちらの台詞だ。今まで…見過ごしていた私の失態だ」



「待て待て待て!!! どうしてお前、緋狭姉を呼び捨て!!?」


煌が信じられないと言った顔つきで会話を割った。


「ああ、そんなこと。オレと緋狭は同い年みたいだからさ」

「はあ!?」

「ちなみにさ、旭は緋狭より遙かに年上だよ。蓮も司狼もね」

「はあああ!?」


「目に見えることを"真実"だと思わないことだ、馬鹿犬」



緋狭さんは笑った。


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