あひるの仔に天使の羽根を
「じゃあ緋狭。オレ達はもう行くよ」
「……どうしてもか?」
「ああ」
そう頷くと、久遠は少しだけ…芹霞を見た。
「せり。君は、帰れ」
それは一瞬のこと、久遠はすぐに芹霞に背を向けて。
「オレは、君が嫌いだ。"永遠"は無効だ」
「あたしは!!! 大体"永遠"は刹那と!!!」
「刹那も――
そう言っている」
翳ったその妖麗な顔は。
泣いているように思えた。
「嫌よ。あたしは……!!!」
取り縋って残存を主張する芹霞に、
「さようなら」
無情な言葉と共に、すっと…その鳩尾に手刀を入れて。
芹霞が蹲ったその隙に、久遠は1つ深呼吸をして、
「皆、行くぞ」
彼らは――
部屋の外…神楽に向かった。
まさか。
久遠は。
――……どうしてもか?
真意を判っているのは、恐らく緋狭さんしかおらず。
「緋狭さん、久遠は!!?」
緋狭さんは、悲哀に満ちたその眼差しを…伏せた。
死ねば――
それで終わると。
苦しみが終わると…そういうことか!!?
だけどそれは――
「待って、久遠…刹那!!!!」
蹲っていた芹霞が、吼えるように叫ぶと――
「煌、急いで台車!! 神楽へ!!」
「あ、ああ!?」
「急がないと絶交!!!」
慌てた煌が、芹霞を抱きかかえて走る。