あひるの仔に天使の羽根を
「13年経っても…
残酷だね、せりは」
久遠はそう…自嘲気に言った。
「じゃあ――…
オレ達に生きろというのなら。
今度こそ約束しろよ。
絶対的で、無効に出来ない約束。
13年前の――
"永遠"を忘れるって」
「――…え?」
「オレはね、せりが嫌いなんだ。嫌いな女に"永遠"を縛られたくないし、更に"責任"と"罪悪"で、我が物顔で傍にいられても迷惑この上ないし、腹立たしいだけだ。
オレと刹那は…君との出会いで狂わされた。だからもう…関わり合いたくない。"生"を…選ぶのなら、君の居ない"生"がいい」
突き刺すような…研ぎ澄まされた言葉の刃に、芹霞の息を呑む音が聞こえた。
そして久遠は――
芹霞から視線を外し、後方に立つ俺を見た。
整いすぎて、気味悪く思える…妖麗な顔。
何処までも表情が壊れ、何も無い虚無の顔。
妖香を漂わせて誘惑し、それでいて何者をも拒む…艶美な肉体。
俗っぽくて崇高な――
流されているようで、決して流されていない…確りとした存在感。
燃えるように輝く紅紫の瞳。
凍てつくように輝く瑠璃色の瞳。
どちらが表層に出る、"意識"なのか。
何処までも相反するものを抱えながら。
何処までも"矛盾"を抱えながら。
容赦ない"言霊"を繰り出す男は、
己が"生"を強く叫び続ける。
それを"非情"だとか、"無様"だとか。
そんな陳腐な言葉で片付けられない俺は、
その中に、本当の"あいつ"の姿を見出した。
あいつの"言葉"の力を受け取った。
ああ――
この男は。