あひるの仔に天使の羽根を

・貪欲 櫂Side

 櫂Side
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芹霞の涙と、俺を拒む姿勢に、

少しからかうつもりだった。


からかいが本気になりつつある危惧を感じた時、

俺とは反対に余力を残す芹霞を見たら、

何かが音を立てた。


少しからかうだけだったのに。


芹霞の匂いに、

芹霞の柔らかさに、

芹霞の甘さに、


我を忘れる快感を覚えてしまった。


2ヶ月間、耐えていた時間を考慮しなかった俺の過失で。



「……んんッ……か…ハア…いっ」



ぞくり、とした。


何ていう艶声で啼くんだろう。


思っていた以上の破壊力に打ちのめされる。


慣らされた……のか?


誰に……?


激しい嫉妬と同時に、身体の芯が切なく疼く。


もっと――啼かせたい。


俺だけの色に染め上げたい。


欲望は果てなく。


「か……い……やッ…んんッ」


拒むことは許さない。


許すべきものは、応えることだけ。


俺のことを考えることだけ。


俺の本能が暴走する。


駄目だ……止まらない。


煽られる――。


芹霞という存在に、根こそぎ乱される。


駄目だ、駄目だ!!


今はまだその時ではないだろ!?


だけど抑止する心とは裏腹に、身体は一途に芹霞を求めて。


貪欲に、芹霞の熱だけを求めて。


俺と芹霞の身体が別々なのが、こんなにもどかしく。


須(すべか)らく、繋げてしまいたくなる。







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