あひるの仔に天使の羽根を
そんな時――
「僕達と、帰ろう?」
玲くんの温もりを背後から感じた。
優しい物言いとは裏腹に、回された両腕は次第に力が込められ。
絶対離したくないと言われているようで、切なくなった。
耳元で囁かれるのは、小さな小さな玲くんの声。
「好きだ、好きなんだ…」
熱の籠もった震える声に、あたしの心まで震えた。
温かい玲くん。
ほっこりさせてくれる玲くん。
あたしの大好きな"彼氏"。
ごめんね、玲くん。
まだあと1日"彼女"なのに。
――僕ね、いつも女の子からフラレるんだ。
あたしがフることになってしまうんだろうか。
出来るならば、優しくて傷つきやすい玲くんにとっての、"初めての自分からのさよなら"を経験させて上げたかったのだけれど。
「ごめんね、玲くん」
あたしは久遠に拒絶されたからと言って、玲くんの手を取ることは出来ないの。
それだけの覚悟で、あたしは玲くんも切り捨てた。
だからもう――
こんな冷たい女なんか…忘れてよ。
玲くんは幸せになる権利がある。