あひるの仔に天使の羽根を
皆が櫂の名を呼ぶ。
櫂。
此の地に来るまでは、さよならなんて考えたことはなかったけれど。
――芹霞ちゃあああん!!
――芹霞。
あたしが、"永遠"を信じていた大好きな幼馴染。
櫂の存在があったこと、あたしは幸せでした。
例え櫂が、
――僕を捨てないで…。
また泣いたとしても。
――覚悟しておけよ?
不敵に、あたしを連れ帰そうとしても。
あたしは――…
「帰りたくないって言ってる奴を連れ帰る訳にもいかないだろう?
元より俺は、芹霞に切り捨てられた身。
芹霞を残して帰るぞ、皆」
あたしは――…。
「………!?」
櫂は、
あっさり、帰ると言った。
あっさり。
本当に…拍子抜けするくらい。
「おい、櫂!!?」
「櫂!!?」
「櫂様!!?」
そんな櫂の様子は、皆も予想していなかったみたいで。
あたしすら考えてなかったことで。
「緋狭さんも、遠坂達も…もう塔から出て行った。あまり待たせるな、早く出るぞ。それにこの塔も崩れ始めている」
そう――
背中を向けた。
あたしに。