あひるの仔に天使の羽根を
――――――――――――――――――――――――――――……
「秋休み終わったら試験なんて、何で黙ってたのよ、大事なこと!!」
黒目がちの大きな目。
颯爽と整った爽やかな少女は、必死な形相で机の上に置かれた問題集と格闘していた。
「俺、駄目。もう頭…駄目」
俯して動かなくなってしまったのは、橙色の髪を持つ少年。2つ名を『暁の狂犬』。
「…馬鹿蜜柑。そんな問題も解けないなんて」
そう大きな溜息をついたのは、短い黒髪を持つ…ゴスロリ美少女風…16歳の美少年。2つ名を『漆黒の鬼雷』。
「!!! 高校に行ってないお前より、俺の方が遙かに知識あるんだ!!!」
そう顔を上げて憤る橙色の少年に…黒い少年はすっと細い指を向けた。
「…問14 答えが間違っている」
「あ!?」
「その3次関数の解が、どうして"12345"、しかも整数だ!!?
櫂様がちゃんと説明したのに、巫山戯るのかてめえ!!?」
「お、お前だって正解判らないくせに、勝手なこと言うんじゃねえよ!!!」
橙色の少年は、真っ赤な顔をして問題集を手で隠した。
「…だって。じゃあ正解は、桜?」
にっこりと微笑んだのは白皙の美青年。2つ名を『白き稲妻』。
「はい。f(x)=x^3+3x^2-6x+2ではないかと」
すらすらと答えた黒い少年に、白皙の青年は嬉しそうに頷く。
「正解だ、桜」
「はあああ!? どうして、それじゃなくても年下の桜がそんなの判るっ…ていうかよ!!! 桜も玲も、どうしてそんな距離からぱっと見で、微分積分出来るわけ!!? どうせあてずっぽう…」
「何だと、コラァ!!? 玲様を侮辱する気か!!?」
「な、何で玲のことでお前が怒るんだよ!!!」
「桜に勉強教えているのは僕だよ、煌。どう、櫂?」
「……正解」
腕を組んで答えたのは漆黒の少年。2つ名を『気高き獅子』。