あひるの仔に天使の羽根を
多分――
俺が知らないと思っていたんだろう。
「知ってるさ。煌も玲も……だろ?」
「!!!」
……判りやすい。
それは芹霞の長所であり、短所であり。
現実を思い知って溜息をつけば、芹霞が短い声を出して身を捩る。
息が耳にかかったらしい。
俺は微かに笑い――
「や、やめッ!!!」
芹霞の弱点である耳朶に噛み付いた。
びくりとした振動。
「どうして俺が後発なんだよ……」
理不尽な現実に、不満を漏らし。
「8年以上も我慢していたのに……」
そして耳に舌をねじ入れる。
「ひゃあッ!!!」
煽られる声と表情。
「なあ……。
誰とのが良かった?」
聞いてはならぬ言葉を、俺の口は紡いで。
「俺は……お前がいい。
一生――
お前とだけがいい」