あひるの仔に天使の羽根を
絡み合う――。
まさしくその比喩が似合う2人がそこに居て。
俺が心底尊敬する美しい櫂と、俺が心底惚れ込んだ芹霞の……
強く抱き合い、深く唇を合わせるその姿は、
酷く淫靡で、酷く美しく――。
そこはもう、完全2人だけの世界で。
そうなることが予(あらかじ)め世の定理であるかのような自然さで。
それがショックで、悔しくて。
声を上げれないほど悲しくて。
呼吸が――止まった。
目だけはその光景からそらすことが出来ず、
全身が鳥肌が立つほどに嫉妬して。
どうして芹霞の相手が櫂なのか、
どうして芹霞の相手が俺じゃないのか、
発狂しそうなくらいに心で慟哭して。
俺が居るのに。
此処に俺が居るのに――。
俺の存在は初めからなかったかのように擦り抜けて。
なあ……芹霞。
やっぱお前櫂がいいのかよ。
お前なんて顔してんだよ。
何て声出しているんだよ。
俺だけが知っている、あの芹霞が薄らいでいくようで。
どうして……他の男に身体を預けるんだよ…芹霞。
お前――…
どうして…
俺のものじゃねえんだよ。
俺と唇合わせたあの時は、俺の独り善がりで終わってしまったのか。
謝らねえって俺言ったじゃねえか。
忘れたくねえんだよ、俺は。
どうして――
俺以外の男に抱かれるんだよ…。
切ねえ――…。