あひるの仔に天使の羽根を
 

俺は髪を掻き毟った。


俺のこの安っぽい橙色がもし櫂のように漆黒の色だったら。


もしこのガラの悪い顔が櫂のように気品があったのなら。


もし俺が、櫂より先に出会っていたならば。



櫂に――

なりてえ――…。



芹霞を――

諦めきれねえ…――。



俺の頭の中は真っ白で。


俺の悲鳴のようにがんがん内部から脈打ち。


気づけば俺は、芹霞の手を引いていて。



「……煌!?」



芹霞が心配そうな声を俺にかけていて。


苛つく。


本当に苛つく。


どうして判らねえんだよ、この女はッ!!!


そんなに櫂しか見えてねえのかよッ!!!?


俺は乱暴に壁に芹霞を押し付ける。


「こ、煌?」


不安げな芹霞の声なんか知るもんか。


俺を焚きつけたお前が悪い。


俺の気持ちを考えず、他の男の元で恍惚とした表情を浮かべていたお前が悪い。



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