あひるの仔に天使の羽根を
 

「芹霞――」


低い声が出た。


芹霞は瞬間、強ばった顔をする。


俺は芹霞が逃げ出さねえよう、顔の両側に両手をついた。


「な、何よ? まだ怒っているの!?」


俺はカッとなり叫ぶ。


「どうして――

判んねえんだよッ!!?」


俺は芹霞の頬を片手で押さえると、無理矢理唇を押し付ける。


冷たい感触。


拒まれているような――。


「――…ッてえ!!!」


思い切り唇を噛まれ、瞬時に離れた俺の口腔内には、鉄の味がした。


「どいつもこいつも……!!!

盛るな、馬鹿ものッ!!」


緋狭姉が言うような台詞を吐いた芹霞は、詰るような眼差しで俺を睨んだ。


駄目だ、芹霞に通じてねえ。


見せつけられた俺の心なんて、判っちゃいねえ。


「……考えてみろよ」


「は?」


「どうして俺がこんなことをするのか、よく考えろよ!?」


血を吐くような心境で叫べば、


「……思春期の性少年、春盛り?」


凄えカチンとくる。


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