あひるの仔に天使の羽根を
俺は唇を噛みしめながら、遠坂を宥める芹霞の元に赴き、横を通り抜け際に耳元に囁いた。
「――…きだ」
しかしヘタレの俺の声は小さすぎたようで。
「え!?」
大げさ過ぎるほどに大きな声で振り向く芹霞に、俺の声は掠れてでてきやしねえ。
――好きだ。
ただの3文字だというのに。
いざとなったら出てこねえ。
意識しちまったら俺、駄目なんだ。
心臓がバクバクいって言うこときかねえし。
だけどそんな悠長なこと言ってる暇ねえし。
判っているけど、玲やら姿見せた櫂やら桜やら、色んな視線を浴びた中で大声出して告れる状況でもねえだろうし、そんな度胸もなく。
だから――
「芹霞。ここを抜けたら――
言いたいことがある」
そう、次に繋げるのが今の俺の精一杯で。
その声はやはり小さくなってしまったけれど。
情けねえことに震えてしまったけれど。
「真剣に聞いて欲しい」
俺は――勝負をかける。
芹霞に、言葉に出して想いを伝える。
決めたんだ。
櫂に……奪われる前に。