あひるの仔に天使の羽根を
熱が急激に引いた感じで。
余韻なんていうものはなく。
ただひたすらに。
時間が巻き戻り、なかったことになればいいのにと願った。
そうすればあたしは――
櫂と深く口唇をを合わせたことが、
櫂と深く抱き合ったことが、
気持ちよかったなんて、
もっとそうしていたかったなんて、
思ったことを後悔なんてしなくてすんだのに。
あたしが一番近くに櫂を感じて、
櫂が一番近くにあたしを感じる。
それはまるで8年前の……それ以上の密な関係になったようで、本当にあたしは涙が出そうになるくらい嬉しかったのに。
――なあ……。
誰とのが良かった?
まさに――急転直下。
あくまで櫂の気紛れで。
あくまで櫂の誇りのために。
あたしはそこいらの女と同じ扱いをされたのだと、
幼馴染を利用されたのだと、
思ってしまえばもう櫂の言葉なんか聞こえていなくて。
ただ願わくば。
櫂とあたしの仲が永遠に、8年前みたいにずっと一緒でいられるように。
ずっとずっと一緒で居られるように。
――誰が居るんだ、お前の中に。
どくん。
あたしの中の陽斗が悲鳴を上げた。