あひるの仔に天使の羽根を
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あたしは玲くんと由香ちゃんに挟まれるようにして、再び鏡の迷宮の岐路に立つ。


自分の姿に惑わされる。


あたり一面、虚像ばかり。


じっと眺めてみれば


「ねえ、どれが本物か判らないねッ!!」


由香ちゃんの言葉通り、どれが真実の姿なのか判らなくなる。


判らないのは姿だけではない。


進むべき道が判らない。


なぜあたしが道標になってしまったのか判らないけれど、はっきりいって無謀すぎる。


しかしそんなあたしの訴えは、微笑むままの玲くんに簡単に却下され、後押しされるよう……無理矢理先頭に立たせられた。


仕方がない。腹を括ろう。


さて、どちらに行こう。


右か、左か、真っ直ぐか。


3択に非常に悩まされる。


「左に行こうぜ?」


あたしの顔色窺いながら、煌がやけに陽気に言った。


判っている。


明るく振る舞うのは、煌の虚勢だ。


ごめん、煌。


もう少し我慢していて。


「ええ!? こういうのは右だろッ!!?」


由香ちゃんが声を上げる。


そうか、こういうのは右なのか。


「うーん、じゃあ最初は右に……」


右に行こうと行こうとした時、


どくん。


まるで考え直せと言っているように、心臓が跳ねた。



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