あひるの仔に天使の羽根を
陽斗が、何かを言っている。
左に進んだ方がいいの?
どくん。
陽斗がまた騒ぐ。
だとしたら――
「まっすぐに行こう」
陽斗は大人しくなった。
あたしは、あてにならない自分の勘より陽斗を信じることにした。
あたしと陽斗は一心一体だから。
陽斗があたしを騙すはずはない。
「ね~神崎~。先刻から"まっすぐ"ばかりだけどいいのか~!!?」
由香ちゃんの声。
「いいの。それに旭くんも言ってたでしょ!?」
――ここを出たらまっすぐです。
――惑わされずに進んでください。
「あたしは信じるの。旭くんも、陽斗も」
あたしの強い語気に、誰も何も言わなかった。