あひるの仔に天使の羽根を
次いで現れたのは櫂様で。
櫂様の表情は更に惨憺たるもので。
あの2人の姿を見ているだけに、どうしてそんな表情になってしまったのか私には判らず。
最後に現れた馬鹿蜜柑に限っては、もう芹霞さんしか見えていないといった悲壮な表情で追いかけてきたようで、
――ここを抜けたら言いたいことがある。
それは決して大きい声ではなく、聞き耳を立てないと判らないものだったけれど、櫂様や玲様が聞き逃すはずはない。
2人の表情が瞬時に変わった。
――真剣に聞いて欲しい。
馬鹿蜜柑が何を言おうとしているのか、誰もが容易に想像つく。
本当に馬鹿な蜜柑だ。
櫂様と玲様の前でわざわざ宣言しなくても。
いや、だから馬鹿蜜柑なのか。
彼は抜け駆けというものを嫌うから。