あひるの仔に天使の羽根を

それ以来――


場がぴりぴりとして空気が重苦しい。


平然としているのは遠坂由香で。


「ねね、キミは邪魔しないの?」


彼女は私に囁いた。


「何を?」


「勿論、如月が告ることに対してさ」


「どうして?」


「どうしてって……嫌だろ? 告られるのは」


確かに、嫌だけれど……。


「嫌って思うのが、嫉妬なんだよ?」


私が嫉妬?


馬鹿な。



「まあ、認めたくないならいいさ。キミもそのうち、実感するだろうからさ」


実感――?


遠坂由香は満面の笑みでそう言うと、芹霞さんの元に駆けた。


私は無意識に左胸の服地を手で掴んだ。




< 165 / 1,396 >

この作品をシェア

pagetop