あひるの仔に天使の羽根を
――――――――――――――――――――――――――――……

「抜けた……!!!」


嬉しそうな芹霞さんの声に顔を上げれば、鏡の終焉で。


ただしまた岩のような石で塞がれた出口が現れ、


「うっそ~!!!?」


遠坂由香が脱力して座り込んだ。


旭が開けてくれたあの石のように、

同じような奇怪な模様が刻まれている。

そう、数字の"4"を簡略化したようなその模様。


当然のように何をしても動かなく。


「……櫂ッ!!!」


一番に反応したのは煌で。


それに軽く頷いた櫂様は音なくすっと前に出て、

小指と人差し指を立ててあとの3本の指を折ったような手印を作り、


「…力を与えよ」


そう呟くと同時に――


石が動いた。


「へ!?」


芹霞さんが真抜けた声を出す。


「俺が開けられることがよかったのか悪かったのか。

とにかく俺の闇属性だけは有効らしい。

さあ、行くぞ」


どうやら石の模様は特殊で、選ばれた者が何かをしない限りは石の開閉は出来ないらしい。


櫂様はその数少ない選ばれた者の1人であるらしく、悔しいがそれは煌には判っていることだったらしい。


多分に、2ヶ月前の藤姫の件が関係しているに違いない。


自動ドアのように時間が経てば自動的に閉まるものでもないから、

石の扉は開けっ放しで背にする他術はない。


とにかくこの迷宮を抜け出し地上に上らねば。


そう思っていた時に、斜め上方から金色の月が覗いた。


凄く――懐かしい気がする。


1本の太い蔦が垂れ下がっている。


掴んで上れば、外界に出られるだろう。


惑いある空間から、脱出できる。


何だか――嬉しくなった。




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