あひるの仔に天使の羽根を
夜目に慣れていないのは芹霞さんだけみたいで、
「ボク? ボクは電気消しても明け方までゲームしているから、ばっちり視界は良好さッ!!!」
そういうものかと一瞬納得しかけたけれど、それが夜目がきくという理由にならない。
道は螺旋状に下って続いているらしく、私が先頭に煌が後に位置して一行の守りにつく。
「ね、ねえ。し、招待されたそのゲームのイベントって、もう終わっちゃったの?」
いやにびくついた、芹霞さんの声が闇に響く。
焦っているような気もするがどうしたのか。
闇を怖がっているのだろうか。
「大丈夫。イベントは明日からの開催予定だから。明日の昼頃までに"神格領域(ハリス)"に行き着けば問題ないよ?」
玲様の、何故か楽しそうな声。
「開催場所が"神格領域(ハリス)"だったらの話だね?」
遠坂由香の声。
「多分……正解のはずだよ。向こう側に船が見える」
確かに――遠い処に何層かの大きな客船が停泊しているのが見える。
「れ、玲くん……」
芹霞さんが慌てた声を出した。
「んー? 何?」
反対に、玲様からは柔らかな声。
「い、いいえ、別に……」
何だかおかしな芹霞さんだ。
彼女の惑いはまだ、続いているのだろうか。
会話する相手は玲様と遠坂由香ばかりで。
不気味な程に静かな櫂様と煌。
彼らの翳りある顔を思い浮かべ、
私は少しだけ心が痛んだ。