あひるの仔に天使の羽根を
しかし本当に暗闇だ。
自分の存在が曖昧で、ふわふわとした妙な浮遊感があって気持ち悪い。
基本、あたしは怖がりだ。
今までは、確かに隣に誰かがいたから常にあたしを支えてくれていたけれど、
隣人が見えない今、不安だけが募る一方だ。
そんな時――
「!!!」
突然あたしの左手を誰かに握られ、吃驚して体が震えた。
「……しっ」
諌める様な本当に小さい声。
玲くんだ。
あたしを安心させてくれようとしているのだろうか。
それても危なっかしくて見ていられなかったのだろうか。
彼らはあたし以上に周りが見えているらしいから。
突然のどっきりはやめて欲しい。
「ね、ねえ。し、招待されたそのゲームのイベントって、もう終わっちゃったの?」
吃驚を誤魔化すように振った話題に、声が少し裏返ってしまった。
その動揺を玲くんは愉しんでいるようだ。
微かに、くすっという笑いが聞こえたから。
暗闇だから余計に、感覚が敏感になる。
あたしの触感が凄く過敏な反応を示している。
「……?」
そんな時――
玲くんの手の動きが微妙に変化した。