あひるの仔に天使の羽根を
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あたし達が目指していた明かりは、明らかに東京で見慣れた人家の輪郭を持ち、圧倒的な存在感を見せる洋館へと移り変わった。
オレンジ色の常夜灯から見るに、大きな城のような洋館だ。
あたしの通う巨大私立高校の桐夏学園くらいの大きさは優にある。
回り込んで正門らしき、大きな黒い門に立てば、やがて自動ドアのように観音開きに門が開く。
金持ちに必須な庭園と噴水。
期待を裏切らないアイテムに、感嘆の声を上げて歩いていたのはあたしと由香ちゃんだけで、他の面々は見慣れているものだったらしい。
そういえば、紫堂本家にも噴水があるって聞いていたような…。
しかし――。
誰の家なのかも確かめないで、こんなに堂々と入ってきて良かったのか。
明らかに不法侵入ではないのか。
玲くんが笑った。
「大丈夫だよ。門にあった紋章は……各務のものだったから」
紋章なんてあっただろうか。
やがて――
入り口の前に、畏まる初老の男性を目にした。
待ちかねていたかのように深いお辞儀をして出迎えてくれた。
「ようこそいらっしゃいました、紫堂様。
お見えにならないので、心配しておりました」
にこやかな笑みを浮かべる、白髪交じりの低姿勢の男性は。
その服から想像するに、
「私、この各務家の執事を務めさせて頂いております、荏原(えばら)と申します。さあどうぞ、紫堂様。お腹もお空きになったことでしょう。只今広間にて来客の皆様は立食パーティー中でございます。ご案内致しますので、どうぞこちらへ」
威風堂々と先頭に立った櫂は、あたしと玲くんの繋がったままの手を一瞥すると、非常に不愉快そうな顔をした。
凍てつくような眼差しを見せた櫂に、あたしは思わず玲くんとの手を離そうとしたが、玲くんが力を込めてそれを拒みにっこりと微笑んだ。
何で離そうとしないのか判らないけれど、荏原さんが怪訝な顔を向けてくるわ、煌も睨み付けてくるわで焦ったあたしは、無理やり手を放して櫂を追いかけるように屋敷に入った。
あたし達が目指していた明かりは、明らかに東京で見慣れた人家の輪郭を持ち、圧倒的な存在感を見せる洋館へと移り変わった。
オレンジ色の常夜灯から見るに、大きな城のような洋館だ。
あたしの通う巨大私立高校の桐夏学園くらいの大きさは優にある。
回り込んで正門らしき、大きな黒い門に立てば、やがて自動ドアのように観音開きに門が開く。
金持ちに必須な庭園と噴水。
期待を裏切らないアイテムに、感嘆の声を上げて歩いていたのはあたしと由香ちゃんだけで、他の面々は見慣れているものだったらしい。
そういえば、紫堂本家にも噴水があるって聞いていたような…。
しかし――。
誰の家なのかも確かめないで、こんなに堂々と入ってきて良かったのか。
明らかに不法侵入ではないのか。
玲くんが笑った。
「大丈夫だよ。門にあった紋章は……各務のものだったから」
紋章なんてあっただろうか。
やがて――
入り口の前に、畏まる初老の男性を目にした。
待ちかねていたかのように深いお辞儀をして出迎えてくれた。
「ようこそいらっしゃいました、紫堂様。
お見えにならないので、心配しておりました」
にこやかな笑みを浮かべる、白髪交じりの低姿勢の男性は。
その服から想像するに、
「私、この各務家の執事を務めさせて頂いております、荏原(えばら)と申します。さあどうぞ、紫堂様。お腹もお空きになったことでしょう。只今広間にて来客の皆様は立食パーティー中でございます。ご案内致しますので、どうぞこちらへ」
威風堂々と先頭に立った櫂は、あたしと玲くんの繋がったままの手を一瞥すると、非常に不愉快そうな顔をした。
凍てつくような眼差しを見せた櫂に、あたしは思わず玲くんとの手を離そうとしたが、玲くんが力を込めてそれを拒みにっこりと微笑んだ。
何で離そうとしないのか判らないけれど、荏原さんが怪訝な顔を向けてくるわ、煌も睨み付けてくるわで焦ったあたしは、無理やり手を放して櫂を追いかけるように屋敷に入った。