あひるの仔に天使の羽根を
 

「あの……そちら様は・・・・・・?」


荏原さんが控え目に指し示すのは、何やら考え込んでいた玲くんで。


そうだ、玲くんは女装しているんだ。


「ああ、玲く……」


玲くんは男性だから、皆と一緒よ。


そう言おうとしたあたしを遮ったのは当の玲くんで。


「ふふふ。私を忘れられてしまいましたね」


そうにっこりと微笑めば、やはりどこからどう見ても女性で。


声なんかいつもより格段に高いのに、違和感がない自然な声で。


あたしなんより、よっぽど艶ある女声だ。


「は!?」


心外というような、大声を出したのは煌で。


「女性は3人、男性は3人。よろしくお願いします」


実に優雅に玲くんは頭を垂れた。


「れ、玲く……」


「玲、よね?」


急に顔を上げたその鳶色の瞳は、男性扱いするなと言っている。


そんな。


玲くんを呼び捨てにするなんて。


「ね、芹霞?」


傍目で小首を傾げている美女は、

少し……"えげつない"顔になっている。


あたしはもう涙目で。


「う、うう。れ、玲……」


仕方なくそう呟けば、今度は花開くような綺麗な笑みを玲くんは作って。


わめく煌を、櫂と桜ちゃんが引き摺るようにして、

あたし達は、新たに呼ばれたメイドさんを先頭に、

左右に分かれて部屋に案内された。





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