あひるの仔に天使の羽根を
今まで呼び方なんて、全く気にしてこなかったから。
だけどあたしが"せり"と呼ばれたくないように、
玲くんも"玲くん"と呼ばれたくなかったのだろうか。
「別に、嫌っていうわけではないんだよ……?」
益々もってよく判らない。
「いつも可愛く呼んでくれるけれど、たまには呼び捨てでもいいじゃないかなって」
そういうものなんだろうか。
「いつも僕が年上だからって遠慮あった?」
あたしはぶんぶんと頭を横に振る。
「じゃあ――
呼び捨てにしてね?
少なくとも、この地では」
「……わかった」
すると玲くんはふわり、と笑った。
本当に嬉しそうなその笑みに、思わず魅入ってしまう。
やっぱり玲くんは綺麗だ。
櫂とはまた違う美貌だ。
そう思いながらまじまじと見つめていれば、
「も~い~か~い?」
突然の由香ちゃんの声に吃驚する。