あひるの仔に天使の羽根を
明らかに普通ではないあの双子に
最後まで警戒心が解けなかった俺。
近寄れない妙な威圧感が、あの子供にはあった。
俺を拒みきれるだけの、絶対的な…何かの意思があった。
それは最後まで判らなかったけれど。
――全ては約束の内に。
約束とは何なのか。
俺を拒む意思を削ぎ、助けるに至るまでに旭を縛った約束とは?
――偽りない心で、またあのヒトを愛してあげてください。救ってください。あのヒト……刹那様を。
どくん。
嫌な予感に心が鬩ぎ立てる。
刹那って誰だ?
俺と芹霞との間に、そんな名の人間が関わった記憶はない。
だけど俺には判る。
刹那とは、
間違いなく男だ。
「……ま?」
"また"愛すって何だ?
そんな存在、俺は知らない。
そんな存在、俺が許すはずはない。
旭は芹霞に何を託した?
俺の知らない処で、何が起きている?
俺は何を見落としている?
「櫂様……?」
気づけば桜が、心配そうな瞳で俺を覗き込んでいて。
見れば桜も、そして横に佇む煌も着替えていて。
黒い正装(タキシード)服に。
既に着替えを終えていた俺は、2人と共に、荏原から教えられた会場へと足を運んだ。