あひるの仔に天使の羽根を
 
何て――

格好をしているんだよ、芹霞。


芹霞には、緋狭さんと同じく赤が似合う。


その赤の色を纏い、体の線が強調されるような色気有る服は。


広間で飢えた野獣共の格好の餌で。


2ヶ月前の忌まわしい婚約会見時に着用していたものよりも、もっと可憐でもっと大人びて。


芹霞の颯爽とした美を引き立てるもので。


首元にはネックレス。


煌の黒尖晶石(ブラックスピネル)に俺の血染め石(ブラッドストーン)と玲からの金緑石(アレキサンドライト)を収めたそれは、桜が施した装飾縁に彩られ、芹霞の存在を更に際立たせて。


俺は、血染め石(ブラッドストーン)しか目に入らなくて。


俺の守護石を飾る芹霞しか見えなくて。


俺の守護石を身に付けた芹霞にただ嬉しくて。


今すぐ俺の元に引き寄せて、

この美しい女は俺のものなのだと

世界中に見せつけてやりたい程に。


俺がじっと芹霞を見ているように

芹霞もじっと俺を見て――

少しだけ目を伏せる。


「……――ッ!!」


まだ、無視(シカト)かよ。


俺なら何しても平気だとでも思っているのかよ。


俺だって人間だぞ?

俺だって男だぞ?


玲と手を繋いで嬉しそうにしていたお前を、

どんな思いで見ていたと思っている!?


どんな想いで、傍観者に徹したと思う!?


俺が、どんな想いで――


その時、室内が更にどよめいた。
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