あひるの仔に天使の羽根を
――玲、だ。
「れ、玲様……なんて……」
桜が当惑した声を漏らした。
元々玲の端麗な顔立ちは中性的だ。
その玲が鬘だろう長い髪を纏め上げ、化粧を施し、体の線を隠すような白いドレスを纏って優雅に出てくれば、今度は誰もがそちらへ惹き付けられる。
加えて最近特に強めたあの色気を撒き散らして首を傾げて微笑めば、正体を知らぬ男達はふらふらになって玲に吸い寄せられる。
異常に背の高い、謎めいた美貌の女に。
恐らく――
あいつなりの牽制だ。
芹霞に向かう目線を弾くために、
己の女装を武器にして。
本当は女装など、敬遠したいのだろうに。
チャイナ服を着た遠坂は、壁に並べられたフランス料理をとりに並んでいる。
玲は微笑みを絶やさず、芹霞と遠坂を連れて俺の方に歩いてくれば、残念そうな多くの男達の目線がこちらに向けられる。
「むふふふ、どうだい、ボクの師匠は? ボクの味付けだぞ!!」
胸を張りながら手にした肉を頬張る遠坂に、玲ははにかんだように、苦笑した。