あひるの仔に天使の羽根を
「玲、お前化けるなあ……」
煌が酷く感心したようにして、玲の結い上げた髪を触る。
「惚れた?」
にっこりと美しく玲が微笑めば、
「お、俺は浮気性じゃねえッ!!!」
真っ赤な顔で怒鳴る煌に、
「……ふうん?」
芹霞が必要以上に冷たい目をしながら、キャビアを口にした。
何だか、俺達と合流して以来、一層芹霞の機嫌が悪い気がする。
「……自業自得。この馬鹿蜜柑」
桜が鼻でせせら笑う。
「何かさ、皆…オトメゴコロ判っていないよね」
遠坂が嘆いた。
オトメゴコロ?
「神崎だって目一杯お洒落したんだからさ、どうして真っ先に神崎を褒めないのかね? 神崎は正真正銘女の子なのにさッ!!!」
「!!!」
青ざめる煌。
俺さえも――。
窺い見る芹霞は、ぷうと頬を膨らませて誰とも目を合わせない。
そうか、芹霞は――
「師匠だけだよ、すぐに神崎べた褒めしたのは」
見て貰いたかったのか。
あれは無視ではなく――。
俺は自分の軽率さを嘆いた。
俺が口を開く前に、芹霞がぼやく。
「いいもん、いいもん。あたしは玲がいるから…」
自然と流れ出たその呼称に、
「は!? "玲"ッ!!!?」
俺と煌は同時に声を上げた。
すると玲は意味ありげに笑いながら、片手で芹霞の肩を抱いて、
「1歩リード、かしら?」
「~~玲ッ!!!」
煌が耐えきれず声を荒げた時、
部屋の照明が暗くなった。