あひるの仔に天使の羽根を
確かに盗聴されている危険もあるけれど、
そんなこと僕にはどうでもよかった。
仮に"男"として芹霞に近づくことが罪で、
それに対して"断罪の執行人"というものが現れたとて、
僕が負けなければいいことで。
"僕"の想いを罪だという輩がいるのなら、僕は徹底的に闘う。
それくらいの覚悟がなければ、櫂の想い人を横恋慕していない。
こんな辛い思いを長く引き摺っていたりはしない。
僕はそこまで被虐的な趣味は無い。
僕は、諦め続けて生きてきた。
僕は、櫂の影に生きると決めている。
その僕が。
こんなに――
諦め悪く
こんなに――
芹霞を渇望し
こんなに――
自分を主張するのだと
一体、誰が予想出来ただろう。
僕でさえ――
今も狼狽えるくらいなのに。
そんな時だ。
「あ~はっはっはっは!!!」
豪快な、笑い声が部屋に響き渡ったのは。