あひるの仔に天使の羽根を
玲くんだってそう。
女装とはいえ、彼の醸す空気は優雅で気品あるものだから。
引き篭もりという姿はまるで感じさせない。
引き篭もりにさせていたのが悔やまれるくらい。
玲くんだって、そっち側で生きられる人間で。
元々、玲くんが紫堂の跡取りだったのだから、玲くんだって、櫂が変貌さえしなければ、当然あたしとは縁遠い処の住人で。
庶民とは相容れられぬ世界に住まう、その資格は生まれながらにある。
あたしは思った。
美貌というより、根本的に――
あたしという存在自体が異質で、
――場違いなんだ。
それが証拠に、あたしを見る会場の来客者は、
皆奇異なる好奇な眼差しを向けてきて。
あたし――お洒落したんだけれどな。
汗で化粧が落ちて、化け物みたいな顔になっているんだろうか。
そう内心焦り始めた時、櫂と目が合って。
櫂はどう反応するのか。
少しでも可愛いとか思ってくれるかな。
ほんの少し期待して、照れながら目を伏せた。
そして櫂を伺い見れば、
何だか酷く不愉快そうで。
あたしに怒っているようで。
え?
なぜに怒る?
それは――
次期当主たる櫂の面汚しなどと、
思われてしまったんだろうか。
あたし――似合ってない?