あひるの仔に天使の羽根を
 
玲くんだってそう。


女装とはいえ、彼の醸す空気は優雅で気品あるものだから。


引き篭もりという姿はまるで感じさせない。


引き篭もりにさせていたのが悔やまれるくらい。


玲くんだって、そっち側で生きられる人間で。


元々、玲くんが紫堂の跡取りだったのだから、玲くんだって、櫂が変貌さえしなければ、当然あたしとは縁遠い処の住人で。


庶民とは相容れられぬ世界に住まう、その資格は生まれながらにある。


あたしは思った。


美貌というより、根本的に――


あたしという存在自体が異質で、


――場違いなんだ。




それが証拠に、あたしを見る会場の来客者は、


皆奇異なる好奇な眼差しを向けてきて。


あたし――お洒落したんだけれどな。


汗で化粧が落ちて、化け物みたいな顔になっているんだろうか。


そう内心焦り始めた時、櫂と目が合って。


櫂はどう反応するのか。


少しでも可愛いとか思ってくれるかな。


ほんの少し期待して、照れながら目を伏せた。


そして櫂を伺い見れば、


何だか酷く不愉快そうで。


あたしに怒っているようで。





え?




なぜに怒る?




それは――



次期当主たる櫂の面汚しなどと、


思われてしまったんだろうか。



あたし――似合ってない?

< 199 / 1,396 >

この作品をシェア

pagetop