あひるの仔に天使の羽根を
 
せめてもと、芹霞の後について部屋に入ろうとしたら、桜に無理矢理連れ出された。


駄目だ。


こいつの頭は昔から凝り固まっている。


上下関係に厳しく、全く融通が利かねえ。


だからこそ警護団長を務められるんだろうし、櫂や玲の信任も厚いんだろう。


上司だとか部下だとか、まるで気にしねえ俺なんかは桜の天敵みてえなもんで。


今まで何回、こいつにぶん殴られ続けられたんだろう。


バタンと、無情に閉まるドアの外、俺は嘆息漏らして頭抱えて廊下に座り込む。


告ろうとしていた気迫は消えず、今は何が何でも言いたい気分。


そんな俺を桜は冷ややかに、見下すように見ていた。


「やめろよ?」


そこからはもう、悪魔の言葉で。


「てめえが何ほざいても、何1つ変わらない」


――ずきん。


桜の言葉が胸に突き刺さる。


胸が痛え。


「てめえ、櫂様に……玲様にだって何か1つでも勝てる要素があるとでも思ってんのか?」



凄く――


痛え……。




「無駄だ」



桜――




「櫂様に刃向かうな」



お前――



「芹霞さんへの情など、押し殺してしまえ」



何で――



「何で――

泣きそうな顔してんだよ、桜」


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