あひるの仔に天使の羽根を
・嘆き :櫂Side
櫂Side
****************
芹霞の後姿を見ながら、俺は僅かに溜息をついた。
煌の元に行く芹霞を見送るなど、気分がいいものではない。
むしろ――非常に気分が悪い。
俺は気分転換にデッキに出た。
船はもう出港し、潮風が強かった。
青かった空も、まるで今の俺の心を投影しているかのように、澱んだ鈍色をしている。
雨でも降るのか。
――櫂、俺芹霞とキスしたッ!!
馬鹿正直に告白してくれた煌のおかげで、2ヶ月間も俺の心は暗雲が立ち込めている。
しかも、玲の奴。
芹霞を真っ赤にさせて何を囁いたんだ?
絶対、玲も…何か仕出かしている。
あいつさえ我慢できない程、芹霞を想う気持ちは増大してしまったのか。
もう誰も彼もが、動き出そうとしている。
もう、ただ耐えて黙っているだけでは、手に負えない程の激情を抱えてしまっている。
そして俺は――。
芹霞を見る度、心が痛んで仕方が無い。
少なくとも、2ヶ月前までは俺には強みがあった。
誰にも真似できない、俺だけの方法で、俺だけの愛し方で芹霞を護り続けていた。
それが無くなってしまった今――。
俺には、俺の強みがよく判らなくなってしまっている。
むしろ8年前の姿に戻り、芹霞の愛を乞おうかとさえ思うことがある。
そうした心の揺れを、芹霞は勘付いていた。
だから――。
俺の頭を撫でたんだ。
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芹霞の後姿を見ながら、俺は僅かに溜息をついた。
煌の元に行く芹霞を見送るなど、気分がいいものではない。
むしろ――非常に気分が悪い。
俺は気分転換にデッキに出た。
船はもう出港し、潮風が強かった。
青かった空も、まるで今の俺の心を投影しているかのように、澱んだ鈍色をしている。
雨でも降るのか。
――櫂、俺芹霞とキスしたッ!!
馬鹿正直に告白してくれた煌のおかげで、2ヶ月間も俺の心は暗雲が立ち込めている。
しかも、玲の奴。
芹霞を真っ赤にさせて何を囁いたんだ?
絶対、玲も…何か仕出かしている。
あいつさえ我慢できない程、芹霞を想う気持ちは増大してしまったのか。
もう誰も彼もが、動き出そうとしている。
もう、ただ耐えて黙っているだけでは、手に負えない程の激情を抱えてしまっている。
そして俺は――。
芹霞を見る度、心が痛んで仕方が無い。
少なくとも、2ヶ月前までは俺には強みがあった。
誰にも真似できない、俺だけの方法で、俺だけの愛し方で芹霞を護り続けていた。
それが無くなってしまった今――。
俺には、俺の強みがよく判らなくなってしまっている。
むしろ8年前の姿に戻り、芹霞の愛を乞おうかとさえ思うことがある。
そうした心の揺れを、芹霞は勘付いていた。
だから――。
俺の頭を撫でたんだ。