あひるの仔に天使の羽根を
 
桜――くん?


「知り合いか、桜?」


女装ばかりしていた桜が、男だと知っているのは殆どが身内。


部外者が知っているとすれば、

その道に精通した、同業者。


即ち、裏世界(アングラ)に生きる者。


「いいえ」


桜がきっぱりと否定すると、男は形いい眉を八の字にして下げ、それはそれは残念そうな顔つきをした。


「酷いですう~。贈り物まで差し上げたのに~」


わざとらしい演技しやがって。


「何用ですか?」


桜が威嚇するような声を出した。


「ええと……見物しようかと」


「見物?」


俺は目を細めた。


「ええ。咎人の行く末をね」



その時――


締めたドアの内部から、何かが割れる音がした。


「!!?」


一気に緊張が走る。


「お前、芹霞に何をした!!?」


「おやおや何て物騒な。

私は神に仕える身ですよ?しかも、此処に居る私は手を下しようないじゃありませんか。

言ったでしょう。ただの見物です。

私に構ってていいんですか?


あの娘――殺られてしまいますよ?」

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