あひるの仔に天使の羽根を
真下に居るのは俺。
その落下速度は、重力を伴って凄え早い。
だがよ。
このな速度くらいどってことねえ。
緋狭姉の修行の方が、よっぽど死に目にあった。
俺は身を翻し、真上からの攻撃を難なく避けると、踏み出したその1歩の反動を利用して、間髪入れず上段の蹴りを食らわせた。
ぐらりと男の体は傾くが、何とか持ちこたえたみてえで、俺の足掴んで逆に背負って投げた。
こいつ、絶対神父なんかじゃねえ。
しかもこの能面のような顔。
旭と月を襲った男達と同じ様な顔してんじゃねえか。
途端、俺の怒りの炎はめらめらと燃えて。
俺は体を捻りながら、宙でひらりと回転して飛び降りると同時に、手を床につけて、体内の気を外に発散させた。
まあ、欲求不満爆発みたいなもんだ。
床に奔る亀裂。
避けきれなかった男が巻き込まれ、よろけた背中に肘を入れば、はい終了。
背骨粉砕確定だな。
こんなの相手にしている暇はねえ。
物音がする。
あっちの部屋か!?
「芹霞!?」
芹霞が――
船で見た、白い修道服を着た金の女に羽交い締めをされた格好で、更にあのブーメランのような遠隔武器……双月牙を首筋に向けられて、
「お前、何しやがるッ!!!」
俺は全力で走り込み、芹霞を片手で奪えば、
「煌ッッ!!!?」
俺の腕に緋色の線が奔り、痛みが走る。
俺の動きの方が、女より何とか早かったらしい。