あひるの仔に天使の羽根を
毒に耐性があるはずの俺でさえこんなんなら、
一体どこまでの毒塗りたくってたんだよ?
やべえって。
こんな状況なら、芹霞が危ねえ。
芹霞は普通の女だ。
あの双月牙、少し掠っただけでも即死だぞ?
「桜ッッ!!!」
矜持を棄てても、桜に助力を乞うた。
桜に、芹霞を連れて貰わねえと。
体が――
傷を負った体が何だか熱い。
シャラン――。
隠していた、緋狭姉のクソ重い腕環が、だらんとした手首に落ちてくる。
「それは――」
女の動きが少し止まる。
「――ちッ!!!
またあの女――ッッ!!!」
忌々しげな口調が女から漏れる。
緋狭姉を知っているのか?
それとも――
紅皇として、か?
桜は何してやがるッ!!!
その時、
「煌逃げろッ!!!」
突然桜の声が聞こえてきた。
悲鳴みたいに聞こえるなんて。
しかもあいつが逃げろなんて。
俺の頭の回路、
毒でやられちまったのか?