あひるの仔に天使の羽根を


「本土から離れている此処は……自家発電でもしているのか? 

確かに四方八方海に囲まれてるから、水からの電力変換も可能だろうけれど、しかしここまで内部と外部とをきっちり判断して弾ける絶縁体なんて、今まで聞いたこともないな」


玲は腕を組んでぶつぶつと独りごちて考えている。


遠坂が玲に訊いた。


「ねえ師匠。活用源が何であれ、使用量がどうであれ、この街全てに供給する電力を人工的に作るとなれば、それ相応の巨大装置が必要だよ。しかも相当の技術も必要だ。4・5年前にぽっと作られたこんな要塞じみた場所に、そんな技術力もった人間がすぐに作れるなんて……あッ!!!」


遠坂は玲と顔を見合わせた。


「『KANAN』の創始者、格闘ゲームの神様…KAGAMIが居るか!!!

じゃあ、此処に居るのかな、師匠!!!

誰も姿を見たことのないKAGAMIに会えちゃったりするのかなッ!!?」


「可能性高いかも。うわ、僕も何だか嬉しいや」


それは凄い興奮のしようで。


この2人は本当に、その格闘ゲームの作者だという"KAGAMI"を崇拝しているらしい。


やがて遠坂が苦虫をかみつぶしたような顔で言った。


「あー、何か"技術"で思い出しちゃったよ、ボク。半年前、東京全域であったよね、停電。あの数十秒でボクのプログラム、無停電電源装置(UPS)擦り抜けてパーさ。あん時は本当に参ったね~。ガッビ~ンだったよ。師匠みたいに自作UPSを2重にも3重にもにかけときゃよかったのに、面倒がって既製品に走った痛い結果さ」


消えたというのは――きっと俺対象のあのプログラムのことだろう。


「あの停電の被害は甚大だったって聞くよね。何百億という金が動いたし、何より、その僅かな時間で機密情報を抜かれた大企業の株価が大暴落。未だ停電は原因不明で、片付けられているっけ」


「紫堂に限っては、お前がきっちり護っているから大丈夫だったがな」


「勿論。そこは抜かりなく」


俺は玲と笑った。


「――ねえ、

そう言えば。

神崎達遅いね?」


遠坂が言った。


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