あひるの仔に天使の羽根を
「顔洗って着替えして…、もう帰ってきてもいいはずなんだけれど」
その時だ。
「!!!」
気配――がした。
明らかに、色を強めた複数の気配。
「――玲」
慌てて見た鳶色の瞳には、既に警戒の光が浮かんでいて。
やはり――
玲も感じ取ったか。
これだけの気配を放って平気だと言うことは、
隠す必要がなくなったということか。
その意味する処は?
「嫌な予感がする」
玲が立ち上がり、険しい顔を俺に向けた。
「それに――
今新たに増えたこの気配……
煌や桜の手に負えるものじゃない」
俺は頷き、玲と共に部屋を出た。
「ま、待って~!!! ボクも~」
……そんな遠坂の声は届いていなかった。