あひるの仔に天使の羽根を
どうして排斥しないのか。
櫂様も玲様も。
私が櫂様ならば、そんな厄介な男、
とっとと遠ざけてしまうだろう。
気分を害す元凶…不安愁訴だと思えばこそ。
今までの櫂様なら、厳しすぎる程
妥協なく譲歩なく、そうしてきたはずだ。
だから紫堂財閥は、櫂様の元で拡大した。
櫂様なら、そう出来る力もある。
誰も咎めない。
それだけの器の持ち主だ。
――桜は、強さしか信じないよね。
玲様がそう苦笑したことがある。
――お前を冷遇して育てた僕達…紫堂のせいだな。
私は――
これ以上ないというくらいに、
櫂様と玲様に優遇されていると思う。
部下の身でありながら、
2人と共の家に住むことを許され、
意見することを許され。
だからこそ。
踏み越えてはならぬ一線がある。
親しくして頂いているからこそ、
尽くさないといけぬ礼儀がある。
主の為にはどんなものでも犠牲にする。
配下とはそうであるべきだ。