あひるの仔に天使の羽根を
「その…獣めいた目が真実の"貴方"ですか?」
男は笑う。
「そんな感情剥き出しの、非情と謳われる貴方の唾棄するその姿は、まるで鬼――悪魔のようですよ?」
それは嬉しそうに。
「悪魔なら、祓うのが神父の勤め。
贖うのが貴方の勤め。
これは――神の御意志であります」
神――。
邪悪丸出しの蛇の眼差しで。
男は、私の喉元に――
思い切り力を入れた。
本能的な私の抵抗をものともせず。
その力は――
私の脳裏を真紅色に染め上げた。
――桜ちゃん?
何故だか芹霞さんの声がして。
無声音に切り替わる孤独な世界の中で、芹霞さんの声だけが私と共に在り。
真紅色で繋がるその幻に。
ああ、ようやく私も
芹霞さんと同じものを共有出来るのかと
少しだけ――
嬉しい気がした。
ああ、私にも。
嬉しいという感情があったのだと
少しだけ――
ほっとした。