あひるの仔に天使の羽根を

・暗闇

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「煌、しっかりしてッ!!?」


あたしを抱える煌の動きが明らかにおかしい。


女の攻撃を凌いではいるけれど、

目は虚ろで呼吸は荒く、身体はふらつき、

何よりあたしを抱える手が異常に熱い。


見上げれば、精悍に顔にはびっしりと汗。


熱――が出ている。


煌は今まで、身体の異常を訴えたことがない。


煌と喧嘩中、緋狭姉に怒られて家から2人追い出された時も、

真冬の最中上着も着ずに完全放置されて、

熱を出したのはあたしだけで。


煌はよく骨折はやらかすけれど、

少し寝ればすぐ治る、特殊な身体を持っている。


その煌が辛そうにしているのは、

かなり深刻な状況であるわけで。


あたしの目に、切り裂かれた煌の上腕が飛び込む。


裂かれた服地から除く傷口は――

異様な紫色だった。


おかしい。


ただの切り傷じゃない。


多分、煌の変調の原因はこれだ。


だとすれば、


「遊びは終わりかな?」


女の手にする双月牙。


それに何か仕込まれていたというのか。



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