あひるの仔に天使の羽根を
「……どうした、桜?」
不意に玲の動きが止まる。
桜は、俺達の後ろに控えて立っていた。
珍しく、何か躊躇っている様子を見せている。
「………」
「どうした?」
俺は、テディベアを両手で抱きしめた桜を見つめた。
「……引き返すなら、今のうちかと…」
「え?」
俺と玲は同時に声を上げた。
「嵐が来そうな…荒れる気がして……」
桜は大きな目で、俺と玲の目をじっと見つめた。
何かを含ませたかのように。
「……大丈夫、僕達はそう簡単には沈まないよ」
暫くして、玲はそう笑った。