あひるの仔に天使の羽根を
 


「……どうした、桜?」



不意に玲の動きが止まる。


桜は、俺達の後ろに控えて立っていた。


珍しく、何か躊躇っている様子を見せている。


「………」


「どうした?」


俺は、テディベアを両手で抱きしめた桜を見つめた。


「……引き返すなら、今のうちかと…」


「え?」


俺と玲は同時に声を上げた。



「嵐が来そうな…荒れる気がして……」


桜は大きな目で、俺と玲の目をじっと見つめた。


何かを含ませたかのように。



「……大丈夫、僕達はそう簡単には沈まないよ」



暫くして、玲はそう笑った。




< 25 / 1,396 >

この作品をシェア

pagetop