あひるの仔に天使の羽根を
「芹霞ぁ……」
何度も繰り返される、煌があたしを呼ぶ声。
「ずっと傍にいてくれよ……」
煌から漏れる切なげな声。
煌は――
心細いんだろうか。
思った以上に、熱のダメージは大きいようだ。
「芹霞……好きなんだ……」
熱が煌を弱らせる。
あの煌があたしに好意の言葉を吐くなんて。
何度も繰り返される"好き"の言葉。
8年も共に育ち、今更何を言い出すのか。
本当に――今更だ。
"好意"のはっきりとした言葉を、心底不得手とするくせに、……ああ、熱は煌をここまで弱らせてしまうのか。
一体何が不安なんだろう。
あたしだって、煌が好きだよ?
煌を少しでも安心させようと、いつも真っ赤になって拒まれる好意の言葉を紡ごうとした時。
食卓は不自然に大きく揺れた。
あたしと煌はど真ん中で居座り。
しかも今は震える煌がしがみついて動けなく。
こんな大きく重いものが頭上から倒れてきたら、あたし達は間違いなく潰される。
煌が元気ならまだしも、
あたしにはこれを動かす力はない。
だとすれば。
せめて煌への衝撃が和らぐように。
せめて煌が、これ以上の痛い思いをしなくてすむように。
あたしは煌を強く抱きしめ、目を閉じた。