あひるの仔に天使の羽根を



――芹霞ちゃあああん。




折角助けてくれたのに。





――ぎゃははははは。




折角命をくれたのに。




――櫂。



あたしは闇石を手で握る。



あの闇に。


あの冷たく、冥い……あの闇に。


ねっとり絡みつくような濃い漆黒色に。


あたしは沈むんだろうか。


あたしは溶け込むのだろうか。




せめて煌だけは助けたいけれど。



あたしには力がない。




無力すぎる。



抱き締めた、煌の逞しい体。



筋肉ばかりで柔らかさは何もないけれど。



ここまで、櫂のために頑張ってきたのにね。


ここまで、緋狭姉の苦行に耐えてきたのにね。


こんな処で、こんな風にやられちゃうの、悔しいよね。



あたしも――


そうだ。





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