あひるの仔に天使の羽根を
なあ、芹霞。
お前、よく庶民だからって、櫂と線を引くけれど、
だったらさ、紫堂に傅(かしず)く俺なんて、生い立ちは全く判らねえ。
そんな俺なら、お前気張んなくてもいいんじゃねえか?
櫂の高級マンションは紫堂財閥の御曹司の居場所に相応しい。
だったら、俺達の育った庶民の家で、俺とずっとずっと一緒に暮らさねえか。
あの家が嫌だったらさ、俺お前の好きなトコ探すから。
俺、今まで仕事で稼いだ金、あんまり使ってなかったし。
緋狭姉程じゃねえけど、結構溜まってきたからさ。
ずっと一緒に居てえんだ。
なあ――
今すぐ、お前と2人きりになれねえかな。
こういう話もしたいんだ。
お前のいない2ヶ月間――
すげえ俺、耐えたんだぞ?
この俺が我慢してきたんだぞ?
ちょっとくらい、ご褒美くれよ。
ちょっと2人で居させてくれよ。
本当に俺、欲求不満で――。
「煌ッ!!! 居たッ!!!」
「どわ~ッ!!!」
突然真上に芹霞の顔を見つけて、俺は驚いて飛び起きた。
幻影かとも思ったけれど本物の芹霞だったみたいで、それが証拠に俺は芹霞の額に頭突きを食らわせ、同時に芹霞から張り手を貰った。
こいつの反射神経は並じゃねえ。
「痛いわねッ!!! 女の子に頭突きなんて、万が一のことあったらどうすんのッ!!」
「そん時は、俺お前を貰うし……ってか、万が一のことなんかなくても俺は……」
「両手人差し指つついて、何ぶつぶつ言ってるのッ!!! そんなことより着替えッ!!!」
俺の求婚、"そんなこと"かよ……。