あひるの仔に天使の羽根を
僕は鬘(かつら)を取って、須臾の前で投げ捨てた。
「え? え?」
驚き狼狽える須臾を目にして、僕は冷たく言い放つ。
「僕だって、"男"だ」
長い髪を棄てただけだけれど。
それでも僕の顔を見た須臾は、"僕"に蒼白な顔色をしながらも、男だということを認識したようだ。
そして多分、判ったはずだ。
僕だって。
僕の方こそが。
強烈に芹霞を求めていることに。
道ならぬ恋の相手は、芹霞だということ。
僕の想いと同様に、"僕"は薄らぐことはないということに。
「師匠~、如月の熱が中々下がらな……っとぉ!!! 師匠、髪、髪ッ!!!」
突然現れた、由香ちゃんが慌てた声で僕の頭を指差した。
僕は深呼吸をして微笑んだ。
「うん。ばれちゃった」
自分からばらしたのだけれども。
これ以上、第三者の"女"であることは、僕の矜持が赦さない。
僕は男だ。
櫂と同じ男だ。
何1つ変わらない。