あひるの仔に天使の羽根を

・選択 櫂Side

 櫂Side
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確かに――

感謝はしている。


紫堂の屈強の者達が、揃いも揃って倒れていた以上、男だ女だとかいう下らぬ理由で、芹霞を俺の傍から離したくはない。


だが荏原は頑としてそれを聞き入れず、救世主さながらに現れた須臾の一存で、俺達は纏めて共に居れるようになったのだから。


随分とおどおどとした少女だと思っていた第一印象を裏切り、女主人風に、須臾は凛とした風情で荏原に指示をした。


その様から見れば、確かに昨日の宴において、放蕩兄の代理としては相応しい人選だったのかも知れない。


ただ――違和感はまだ残るけれども。


大体、そんな女が何故こんな幼児のようなピンク色の部屋に住まうのか。


何処を見てもぬいぐるみ。


うんざりしてくる。


例えようのない閉塞感が苛々となって俺を攻め立てる程。



しかも――

その時間が永遠に続きそうで。


この部屋の空気が、成長の時間を止める。


それどころか逆行しているようで、俺も昔に還りそうな錯覚に囚われる。


――芹霞ちゃあああん。


今更――


冗談じゃない。




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