あひるの仔に天使の羽根を
玲が荏原を連れて、煌や桜を診ている間、俺は須臾と2人となった。
この棟には須臾1人しか住んでいないらしい。
別に監禁されているわけではないらしく、ただ家族と別の棟に寝泊まりしているというだけで、昨日の宴のように敷地内なら何処でも歩けるし、家族との交流もあるらしい。
この"神格(ハリス)"には、男子棟と女子棟、宴が催された各務家本家、そして須臾が住まうというこの棟と、大まかには3つで出来上がっているという。
なぜ家族と同じ棟に住まないのかを聞くと、
「"聖痕(スティグマ)の巫子"は特別なので」
そう須臾が言った。
聖痕(スティグマ)とは、イエス・キリストが磔となった際についた傷と言われている。以来、基督教……特にカトリックにおいては、"奇跡"の顕現として崇められている。
聖痕が出る者の特徴は一定していない。男でも出るし、老いても出るらしい。
ただ、古来より持て囃されているのは清らかな乙女。
故の、"聖痕(スティグマ)の巫子"なのだろうか。
聖痕などという言葉がまかり通るのは、非日常的な世界か、もしくは奇跡の顕現を称える宗教関連――基督教のようなもの。
俺は――船で俺達を襲った刺客達の格好を思い出す。
恐らくは、無関係ではあるまい。
そしてその者達は、紫堂の力を弾く道具を持っていた。
神聖なる……聖少女か。
「"聖痕(スティグマ)の巫子"とは具体的にどんな?」
須臾を見据えながら問いかけると、須臾の顔が少し紅潮した。
「"生き神様"に力を与え、聖痕にて"生き神様"を解放させるのが使命だと言われています」
――"いきがみさま"