あひるの仔に天使の羽根を
 


芹霞は何かを思い出したように時計を見ると、急いで、床に積みあがっている荷物から自分のボストンバッグを選び、中を開いた。


「……」


芹霞が胡乱な眼差しで俺を見上げた。


「何だ?」


俺、ただ見ていただけだよな。


「あたし着替えるの、出て行ってッ!!!」


「ひっで~ッ!! 元から此処に居たのは俺だぞッ!!!」


「それもそうだね、じゃあ隣で着替えてくる」


そう言ってボストンバックを持ち上げた芹霞は、足元の荷物に躓いた。


「危ねえ~ッ!!!」


俺は咄嗟に横から芹霞を支えた。


支えて判ったが、芹霞大分痩せたんだな。


すげえ、軽い。


そんなことを思っていると、


「ああ、中身でちゃった~ッ!!!」


そう叫ぶから、思わず芹霞と共に芹霞のボストンバックの中身を見てしまうと、


「……」


「……」


「……」


「……」


「……なあ」


「……」


「あれさ……」


「……」


「あのスケスケ……」


「……」


「お前……の?」


俺が指差した先には、小さな小さな真っ赤な……スケスケパンツ……。


「――な、わけないでしょ、エロ煌ッッ!!!」


芹霞は真っ赤になって怒り始めた。



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