あひるの仔に天使の羽根を
 

「いやったあッ!!! 神崎大好き~ッ!!!」


由香ちゃんは思いきりあたしを抱きしめ、その頬であたしの頬にすりすり……否、べったべた擦り付けた。


「少しだけだからね、はい準備」


そんなあたし達を引き剥がす玲くんに、


「ケチ~ッ!! ボクは恋敵(ライバル)じゃないぞ~ッ!!?」


「んー? あんまりくっついてばかりだと、もうくっつくことが出来ないばらばらの身体にしちゃうよ?」


ぞわり。


笑顔で何とも剣呑な言葉を頂戴した由香ちゃんは、ぶるぶる震えて土下座して、支度しますからお許し下さいませ~と謝罪する。


「それがいいよ?」


玲くんは、笑ったままで立ち上がる。


「ねえ、女装はやめちゃうの?」


「まあばれちゃったし……といいたい処だけれど」


――ここではこの荏原、何とか致しましょうが、外界……取分け"中間領域(メリス)"の者達には、男装をお見せになりませぬよう。


苦笑する。


――それから。"生き神様"への黙祷は必ず行って下さいませ。心からの畏敬の念を示さねば、罪の制裁を受けることとなりましょう。


何だかおかしな注文もあったけれど、そんな荏原さんの忠告に従って、玲くんは外では女装することにしたようだ。


「でも覚えていて。

君の前での僕は、いつだって"男"だよ?」


玲くん……やめて。


屈み込んでそんな綺麗な顔近づけて

しかも上目遣いでこっち見ないで。



その破壊力に、あたしの腰は砕けてしまう。



そんなあたしを微笑みながら、助け起こしてくれた玲くんは、



「今からそんなんじゃ、この先もたないよ?

あの時の続き……出来ないじゃないか」



耳元で、吐息交じりにそう囁き、

ふっと息を吹きかけた。



「!!!???」



ぼっと、あたしの顔に火がついた。



やばい。


目の前にピンク色の薔薇が降ってきた。



「……ごめん、師匠~」



由香ちゃんの声が聞こえた。


「見ていたボクも動けなくなっちゃった」



本当に、玲くんの色気は凄すぎる。



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