あひるの仔に天使の羽根を
何だか急に元気を無くして黙り込んでしまった桜ちゃん。
やっぱり体調が芳しくないんだと思い、桜ちゃんをソファに連れて寝かしつけた。
桜ちゃんは何も言わず、あたしに促されるまま、そしてただじっとあたしを見ているだけだった。
何かを訴えるような大きな目。
こんなに至近距離で桜ちゃんをゆっくり見つめたことがあっただろうか。
ない。
桜ちゃんはあたしと距離をとっている気配があったから、だからあたしもあえてその一定距離を踏み込もうとしてこなかった。
今、間近に不安げな桜ちゃんがいて。
いつもどこか毅然とあたしを拒む桜ちゃんがいるのに。
何だか、あたしを求めている気がして。
きっと――弱っているんだ。
身体が元気なら、ここで親愛のぎゅうをしたい処だけれど、
あたしはほっぺに親愛のちゅうをした。
「あたしは桜ちゃんが大好きだよ?
桜ちゃんが男であれ女であれどっちでもいいからね」
そうにっこり笑った。
桜ちゃんのは驚きの表情を作ったまま、石のように固まっていたけれど、そんな純真な桜ちゃんを笑って残し、あたしは部屋のドアを閉めた。
願わくば、あたしに桜ちゃんが心を開いてくれますように。
そう、祈りながら。